講義では,固体レーザの発振原理を,利得媒質結晶による光の吸収と誘導放出,4準位モデルと反転分布の生成など,基礎から解説していただきました.実際の波長1064 nmのレーザを例に結晶の温度上昇や発振効率を考慮した光学設計手法を解説していただきました.また,波長532 nmレーザの例では,第二高調波の発生や共振器内部の構構造ついて,実際にレーザーを構築する上で避けることのできない光学素子のミスアライメントの影響を,光線追跡シミュレーションで解析した事例についてご紹介いただきました.最後に,レーザ駆動電流が時間的に変化する場合のレーザ利得の時間応答特性や,意図的に利得をパルス状に変化させることでレーザをパルス発振させる事例について詳解していただきました.
実習では,(1)固体レーザの時間応答と(2)半導体レーザの波長制御の2種類の実験を行いました.
(1) 最初に,オシロスコープやファンクションジェネレータなど,実習を進めるうえで必要な計測装置の取扱方法を解説していただきました.その後,レーザの二倍波結晶の温度を計測しながら,レーザ出力をフォトダイオードで計測し,出力が最も強くなるSHG結晶温度を決定しました.続いて,ファンクションジェネレータでLD電流を外部変調し,LD電流波形とレーザー出力波形の相関をオシロスコープで計測しました.また,LD電流波形の周波数とピーク値を変化させることで,レーザ出力の過渡的な強度の振動の様子が変化することを確認しました.最後に,外部変調によるパルス発振時のパラメータの最適化に取り組みました.前述の各種パラメータとパルス発振させたときの電流波形の関係から,パルス発振時のピーク強度が最も強くなる条件を見出しました.
(2) まず,LDから出射してプリズムを通過した光を出力ミラー反射させ,元の光軸と一致するように微調整することで光共振器を構成しました.出力ミラーを透過したレーザー光の輝度がレーザー発振した場合にその強度が非常に明るくなる様子を観測しました.次に,プリズムの直前に、温度勾配をつけた合成石英を挿入しました.温度勾配の大きさを変化させて内部の屈折率分布を変化させ,共振器の光軸に一致する波長を変化させました.その結果,合成石英の温度に応じて発振するレーザ波長が変化することを分光器で計測しました.最後に,出力したレーザにエタロンを挿入し,波長によって干渉パターンが変化する様子とその原因について考察しました.
本実習では、「先端光量子アライアンス」ならびに「東京大学工学系研究科附属光量子科学研究センター」にご支援いただき,博士課程学生の恩河大さん(東京大学大学院工学系研究科),的場みづほさん(東京大学大学院理学系研究科),増井周造さん(東京大学大学院工学系研究科)にティーチングアシスタントとしてお手伝いいただきました。