講義では,光学システムに組み込まれているミラーやレンズ等の光学素子の役割と,素子表面への金属,誘電体多層膜コーティングによる光学特性の違いをご紹介いただきました.材料の切り出しや成形,表面の研磨など,光学素子が完成するまでの作業工程と,完成した光学素子の精度評価の方法についてもご紹介いただきました.最後に,光学素子を使用するための調整ホルダーや移動用ステージの種類とそれぞれの特徴についてご紹介いただきました.
実習では,(1)マイケルソン干渉計を使ったミラー表面の精度評価と (2)光学素子の磨き実習 を実施しました.
(1) レーザー,スペイシャルフィルタ,ハーフミラー,参照ミラー,試験ミラーから構成されるマイケルソン干渉計の調整を行いました.まず,スペイシャルフィルタの調整を行い,きれいなガウシアンビームを形成しました.続いて,ハーフミラーで分岐した2つのビームをそれぞれ参照ミラー,試験ミラーで反射させた後,スクリーン上で重ね合わせ、干渉縞を形成しました。3種類の試験ミラーによる干渉縞をスケッチし,干渉縞が異なる理由、をミラーの精度や固定方法等の観点から考察しました.また,人の手から発生する熱による空気中の熱ゆらぎを干渉縞のゆらぎとして計測することで,干渉計の感度の高さを体感しました.
(2) 光学素子の製造過程の一連の流れ(基板上の傷の評価,研磨,ヤケの除去)を実習で体験しました.まず,ガラス基板に光を当てて,傷からの散乱光の有無を目視で確認しました.続いて,実際の研磨工程でも使用されている研磨剤を使って,光沢のないガラス表面の鏡面研磨に取り組みました.まず,5分間自由にガラス表面を研磨しました.その後,精度が保証されている原器と研磨面を接触させ,干渉により生じるニュートンリングのコントラストと形状から、鏡面の光沢度と面精度を評価しました.1回目の仕上がりを踏まえて,再度5分間研磨を行い,1回目と2回目の仕上がりの違いを確認しました.最後に,ガラス表面が化学的に侵食された状態である「ヤケ」の除去に取り組みました.ヤケの生じている部分を軽く研磨した後,表面に呼気をふきかけ,表面の曇り具合からヤケの有無を評価しました.
本実習では、「先端光量子アライアンス」ならびに「東京大学工学系研究科附属光量子科学研究センター」にご支援いただき、修士課程学生の柳生右京さん(東京大学大学院工学系研究科)にティーチングアシスタントとしてお手伝いいただきました。