講義では,はじめにガラスが結晶とは異なり無秩序な結合長を持つこと,微小領域では秩序をもった構造をしており,X線回折スペクトルにその違いが見てとれること,ガラス生成の条件等,ガラスの基礎的な性質などについて解説いただきました.続いて,紀元前から近代までのガラスの製造方法の歴史をご紹介いただき,溶融法,気相合成法,液相合成法といった現在の様々な製品に対応したガラス製造方法を解説していただきました.その後,ガラスの組成によって屈折率や光透過性といった特性の制御や,蛍光材料の添加による機能性ガラスの製造についてもご紹介いただきました.一例として,Ce:YAGガラスに照射した青色LEDの光が吸収され黄色が発光し,全体として白色光に見える様子を実際に見せていただきました.
実験実習では,2グループに分かれて,光学ガラス作製とその屈折率評価,およびガラス蛍光体スペクトル特性についての2つの実習を行いました.BK-7ガラス材料の粉末に,Sr, La,
Coを添加した混合粉末を調合,1450℃の電気炉で30分間溶融した後,冷却して光学ガラスを成形しました.光学ガラスの密度を測定し,Lorentz-Lorenzの式から屈折率を推定しました.実測値と計算値の値が異なる理由に関して,ガラスの作製プロセスを考慮して考察しました.また,ガラス蛍光のスペクトル特性実験では,ガラス粉末と蛍光体粉末を容器内で混合した後,加圧によって圧粉体を成形しました.目的の厚みになるよう,試料ガラスを研磨して,異なる厚みの蛍光ガラスに青色LEDを照射し,蛍光スペクトルを計測しました.蛍光スペクトルと蛍光ガラスの厚みの関係をグラフ上にプロットし,スペクトル変化の原因を考察しました.