講義では,大型ディスプレイやスマートフォンなどに欠かせないフラットパネルディスプレイの構造と製造方法についてご紹介いただいた後,表面に薄膜トランジスタを露光によって形成する方法と、新たに開発されたマイクロレンズアレイを用いた露光方法を従来の露光方法と比較しながら解説いただきました.また,画像処理技術を用いたパターンマッチングにより,露光したディスプレイ上のマスクなどの外観検査を高速に行う手法について解説いただきました.また,角度を高速に変位可変なマイクロミラーから構成されるDigital Micro mirror Device(DMD)の原理とその制御方法,DMDを応用した一般的に用いられている投影式プロジェクタの構成について解説いただきました.応用事例として,ディスプレイマスクの表面に,DMDによって格子パターンを投影した様子を撮像し,画像解析することによって,試料表面の凹凸を高速に検出する手法について解説いただきました.最後に,Convolution Neural Network(CNN)を利用したAI画像解析の原理,レーザー加工痕画像をCNNによって学習させ,加工特性を正確に推定する手法について解説いただきました.
実験実習では,@DMDによる映像表示とA画像解析の2テーマの実習を実施しました.実習@DMDによる映像表示では,DMDパターンを変化させてスクリーン上に投影される画像を制御する方法について体験しました.次に,高速に変化するDMDの投影パターンと回転するRGBカラーフィルターを同期して変化させ,任意のカラー画像の投影が可能であることを確認した後,色の濃淡や動画にした場合にどういった難しさがあるのかなど,投影手法について考察を行い,DMDによる映像表示に関する理解を深めました.最後に,カラーフィルターの回転周波数や加速度等のパラメータを計算してプログラムに入力し,試行錯誤しながら動画がどのように見えるのか実際に試験して,その結果と理由について考察しました.実習ADMDによる画像解析では,試験試料表面にDMDで格子パターンを投影し,顕微鏡で格子パターンを撮像して画像解析を行い,授業で解説いただいた試料表面の凹凸観察の装置構成と測定原理について理解しました.この計測装置を用いて,ディスプレイマスク試料に投影した格子パターンに顕微鏡の焦点を合わせたて,表面の凹凸を計測しました.計測結果から,所定の凹凸や段差が高い精度で計測されていることを確認しました.
本実験実習では、文部科学省「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」先端レーザーイノベーション拠点「ALICe」と工学系研究科附属光量子科学研究センターのご支援を受け,工学系研究科精密工学専攻の瀬野宏さんにティーチングアシスタントとしてご協力いただきました。